塚口よりはじめのご挨拶(2016/07/25)


はじめに

 

遠く日本を離れて欧州で暮らす私にとって、とても印象に残っている本があります。

深海の使者」(吉村昭氏著)と言って、第2次世界大戦時の日独外交の実態を描いたノンフィクションドキュメンタリーです。

 

深海の使者

 

戦争当時、同盟国だった日独は遠く1万キロを隔てて敵国である英米ソに分断されており、連絡を取り合う方法は極めて限定的な手段しかありませんでした。

 

簡易的には、しかし、敵に分からないように、早口で難解な薩摩弁で国際電話をかけるという方法もありましたが、実質的な交易方法には、唯一、インド洋から喜望峰をぐるっと周って大西洋からヨーロッパに至る、長駆3万キロを2カ月かけて潜水艦で訪欧する方法しかありませんでした。勿論、生還の見込みは低く、任務に就いた全5隻のうち1隻のみ往路日本に生還し、残りの日本潜水艦は全て英米により撃沈されました。

 

伊号52潜水艦とりわけ私にとって印象深い潜水艦は遣欧任務達成の一歩手前、大西洋で撃沈された伊号52潜水艦です。というのも、この伊号潜水艦は225トンの軍用レアメタルに加えて、在欧日本大使館向け外交費として、日銀大阪支店地下金庫にあった2トン近くの金塊(現在時価90億円)を積んで欧州に向かっていたのです。

 

戦後この金塊を求めて多くのトレジャリーハンターが宝探しに乗り出します。結論からいうと、伊52潜は欧州近くの水深5240mに発見されました。1995年にトレジャーハンターのポール・ティドウェルにより沈没位置が特定され、船体も発見されたのです。まさに大海原から針を見つけるこの快挙はどのように成し得たものだったのでしょうか?

 

 

興味深いのは、ポールの方法に、グローバルマクロ戦略のヘッジファンドマネージャーの多くが採用している投資哲学である「シミュレーション思考」が期せずして多く語られていることです。

 

 

宝箱の見つけ方

 

立方体やハコをイメージしてみてください。

そして、この中に未来があるとしたらそのハコはまさに宝の箱です。

 

グローバルマクロ戦略ファンドの運用哲学を紹介した拙著「シミュレーション思考」ではこのハコを形作るその3辺について、その縦軸を「お金の歴史」、横軸を「地政学」、そして奥行きを「世界への好奇心」と位置づけてお話しをしてきました。前述のポールもまさに同様の軸を設定して潜水艦の足跡を辿っていきその場所を推測していきました。

 

当時の日銀は本当に金を保有し潜水艦にそれを積み込んだのか?から始まってその欧州に至る潜水艦の道筋・経緯を、当時の暗号解読内容に加え、地道に経済統計の分析や地政学や当時の諸外国の動静をベースに解き明かしていったのです。

 

今、未来を格納する立方体があるとして、その「宝のハコ」を形作る、縦軸、横軸、奥行きの各々の広がりをより広く持てば、より広がりのある大きな未来を持つことができます。言い換えれば、実際の未来がそのハコの中に入ってくる確率も上がってくることになります。宝探しも投資も、富を見つけるという行動である以上、当然同じカテゴリーにあり、両者へは共通の「発掘」に向けた対応が適用されるという論理です。

 

「発掘」の際に注意すべきは、いきなり海に乗り出すのではなく、また、いきなり投資を行うのではなく、地道に机の上で仮想しストーリーを作ることです。それも大きなストーリーです。それから、細部を検証していく過程では実地に乗り出すことが必須となります。投資ポジションを組んでいくのです。そのあとは実地でのトライアンドエラーで、答えが必ず特定されていきます。将棋の世界で言うところの「着眼大局・着手小局」です。

 

 

「Gゼロの世界に於いて」

 

多くの日本企業が工場を海外移転している現在、貿易収支ではなく、海外投資収入による資本収支にこそ、その多くを依存する私たちの生活を考える時、国際金融の世界は多大な影響を私たちに及ぼしていくものとなっています。国際金融の世界への将来予想は私達に欠かせないものとなっています。

 

その国際金融の世界には現在、不透明感が拡大しています。今、アメリカの存在が薄くなっていく無極化というGゼロ(グローバルゼロ)の世界に突入している以上、更に国家間、企業間、個人間のルール無用の競争が激しさを増しているからです。この傾向は拡大していくばかりです。そして、お金をめぐって、領土をめぐって、世界の国や企業や個人がしのぎを削って繰り広げられる戦いの繰り返しの中で、私たちの過去と現在があり、そして未来も同様に出来上がっていきます。

 

その未来をシミュレーションする際には、つまり、宝のありかを推測するための道具だてには、縦軸を「お金の歴史」、横軸を「地政学」、そして奥行きを「世界への好奇心」とする、この3要素で構築される未来図が欠かせないと考えます。

 

3要素を満たしたストーリーは、客観性に満ちたストーリーとして、国内外の多くの人々に対して説得力を持つストーリーとなるため、国内外の多くの人々を動かす力を持ち、国際金融の世界を動かすドライバーになっていくからです。特に、多くの人を説得できるシミュレーションストーリーは、追随者をもたらす過程でさらに参加者に影響を与えていきます。このことを「ポジティブフィードバック効果」と言い、市場トレンドが強化されていくことを言います。不特定多数が参加する国際金融の世界に於いてよく見られる現象のうちの一つです。この国際金融を起点としたポジティブフィードバック現象は社会に強く新しい影響を与えてきました。

 

ヘッジオンラインでは、「シミュレーション思考」すなわち、「歴史に学ぶ」をベースに「着眼大局・着手小局」を行い、世界の新潮流を日次で追っていくことを目的としています。そして、ポジティブフィードバック効果をはじめとする種々の現象でトレンドが強化された結果の「長期的な動き」を捉えていこうという試みです。

 

グローバル投資戦略の専門家である私、塚口直史と国内有数のストラテジストである藻谷俊介ストラテジストと「シミュレーション思考」を会得し、人より一歩先んじて、荒海のその先にある黄金で輝く世界の姿を共に見ていきましょう。

 
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塚口直史のプロフィール

塚口 直史
(Tadashi Tsukaguchi)

tsukaguchi

英系投資顧問会社SPRING社 執行役員、グローバルマクロ運用デスク統括。ロシアモスクワを拠点に活動中。

2005年から2010年にかけて、ブラックロック社マルチアセット・ポートフォリオ・ストラテジーズ・グループに在籍し、アジア・グローバルマクロ戦略ファンドを主統括。リーマンショック時には随一のパフォーマンスをあげた。マーケットが下がる局面でリターンがでる、ダウンサイドリスクに強いことで定評がある。

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◆塚口直史著書
世界第3位のヘッジファンドマネージャーに 日本の庶民でもできるお金の増やし方を訊いてみた。」朝日新聞出版 (2017/10/6)

トランプ・シフト これからの世界経済に備える14のこと」朝日新聞出版 (2016/12/16)

情報を「お金」に換える シミュレーション思考」総合法令出版 (2016/7/22)

藻谷俊介のプロフィール

藻谷 俊介
(Shunsuke Motani)

motani

株式会社 スフィンクス・インベストメント・リサーチ設立 代表取締役

「日経ビジネス」、「週刊エコノミスト」など一流経済誌に長年定期寄稿してきた気鋭のエコノミスト。その定点観測に基づく時系列的な景気分析は、その時々のトピックス主体の報道論調とはかなり異なる。日経ヴェリタス人気ランキング(エコノミスト部門)において、1995 年の13 位に始まり、2015 年の10 位まで21 年間連続でランクイン。

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事務局管理人のプロフィール

管理人:持田 太市

SBIハイネットワース株式会社
代表取締役

住信SBIネット銀行開業メンバー。開業後はウェブマーケティング部署を経て、海外でのオンライン金融事業の進出支援に従事。ロシアのモスクワに駐在し、インターネット銀行サービスを導入。モスクワ駐在中に、英SPRING社に所属するファンドマネージャーである塚口直史氏と出会い、意気投合。帰国後、新規事業としてウェブを活用した情報プラットフォームプロジェクトを立ち上げ、塚口直史氏と一緒に事業展開を行う。

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